2021-09-15
こんにちは!博多プライベート歯科です。
以前、当院で上下の総入れ歯を作成した患者様から、完成した数日後にお電話をいただき、「高い治療費を払って自費の精密入れ歯を作ったのに、やっぱり外れやすい😠」とお怒りの様子だったことがありました。
入れ歯が完成して院内で入れてみたときは吸着がよく、硬いものでも噛めるようにぴったりとお口に合っていたのに、どうしてだろう?とお話を詳しくうかがってみると、原因が分かりました。
精密入れ歯を新しく作る前に使っていた、古い保険の入れ歯に塗っていた入れ歯安定剤がまだ余っていて、もったいないからと引き続き使用していらっしゃるということが判明しました🥺
ペタペタとした粘着性のある接着剤ではなく、入れ歯の裏側全体に粘着性のないガムのような薄い膜を張るタイプの安定剤だったため、せっかくの精密入れ歯の吸着性を駄目にしてしまっていました😥
精密入れ歯をお渡しする際に、あまりに外れやすいときにしか接着剤や安定剤は使わなくていいということは説明していたのですが、うっかりしていたと謝罪され、安定剤の使用をやめたら全く外れてこなくなったと後日改めてご報告いただき、患者様も私達もお互い一安心できました😄
少しでも入れ歯を快適に使おうと、接着剤や安定剤を使用するのは、全く悪いことではありません。
しかし、入れ歯安定剤は使い方や選び方を間違えると顎の骨を減少させ、また多くの安定剤が必要になるという悪循環に陥ってしまいます。
そこで、入れ歯を使っていても意外と知らない方も多い、入れ歯安定剤の正しい使い方などについてご紹介いたします。
そもそも、どうして外れやすい入れ歯と、外れにくい入れ歯があるのでしょうか。
外れにくい入れ歯とは、歯ぐきにピッタリと吸着する入れ歯です。つまり、歯ぐきと入れ歯の床(ピンク色の人工歯茎の部分)に隙間がないように設計されている入れ歯です。特にバネを掛けて固定することができない総入れ歯の場合は、吸着力だけで入れ歯を維持させなければならないため、いかに歯茎の形に沿った入れ歯を作ることができるかという点が重要となります。
しっかりと吸着力がある入れ歯は、安定剤を使う必要はありません。必要ないのに安定剤を塗ってしまうと、上記の患者様のように、反対に吸着を損ねてしまいます😧
部分入れ歯の場合は、残存歯に金具で固定されますが、金具(バネ・クラスプ)が緩んだり、形態や位置などが適切でなかったりする場合、入れ歯が外れることがあります。
部分入れ歯・総入れ歯どちらにも共通する外れやすくなる原因は、「入れ歯の形がお口の形に合っていないこと」です。入れ歯の床が歯ぐきの形に合っていないと、歯ぐきと床の間に隙間ができ、入れ歯が安定せず外れやすい状態になります。また、歯ぐきの一部だけに入れ歯が擦れることになるため、口内炎のような傷ができたり、痛みが発生したりしてしまいます。
また、入れ歯を作った当時はしっかりと吸着する安定した入れ歯だったとしても、長年使ううちに顎の骨が減少するなどして顎堤の形状が変化し、入れ歯が外れやすくなることもあります。
骨が少なくなった状態で新しく入れ歯を作り直したとしても、歯ぐきの表面積自体が減ってしまっている場合は、吸着力がなく外れやすい入れ歯となる確率が高いでしょう。
他にも以下のような原因で外れやすくなります。
入れ歯のサイズの問題:入れ歯のサイズが小さいと吸着力が不足し、大きすぎると口内で動いて外れることがあります。
噛み合わせや人工歯の問題:不適切な噛み合わせや人工歯の位置のズレは、入れ歯が外れる原因となります。
唾液量の問題:入れ歯の吸着には唾液が重要で、唾液不足は入れ歯が外れる原因となります。
入れ歯が外れやすいことでお悩みの場合は、歯科医師による原因の究明と、それに応じた対処が必要ですが、一時的に入れ歯を安定させておくためなら、入れ歯安定剤の使用が有効な場合があります。
隙間があることで痛みがあったり、外れやすかったりする入れ歯の場合は、隙間を埋めてくれるクッションタイプやシートタイプの入れ歯安定剤がおすすめです。
顎の骨の減少が原因で外れやすい入れ歯には、パウダーやクリームタイプの接着剤の役割を果たす入れ歯安定剤がおすすめです。
しかし、入れ歯安定剤にはメリットもあれば、デメリットも存在します。使用中の入れ歯によっては、入れ歯安定剤の使用自体ができないものもあります。自分の入れ歯には安定剤を使っても良いのか、どのようなデメリットがあるのかなど、事前にしっかりと把握しておくことが大切です。
入れ歯の安定と吸着性を向上させるために、隙間を埋める安定剤です。唾液や他の液体に溶けにくい材質であるため、入れ歯に長く残ります。また、入れ歯を取り外した後も再利用できます。
このクッションタイプの製品は、取り外す際も容易です。ただし、金属製の入れ歯の床には使用できず、レジン床にのみ使用できます。
多くの製品は吸着性よりもクッション性に優れており、入れ歯による不快感を軽減します。過剰に塗布すると、入れ歯の安定性が損なわれる可能性があるため、使用量には注意が必要です。
クリーム状の入れ歯安定剤は、指で簡単に伸ばしやすく、チューブなので使いやすいです。粘着力が非常に強く、入れ歯が外れにくくなります。長時間の使用後にはクリームが溶けることがあるかもしれませんが、飲み込んでも安全な素材で作られています。
クッションタイプの安定剤と比較して、この製品は粘着力が高いです。総入れ歯にも使用できます。
口の中で水や唾液と組み合わさり、粘着性が増すことで入れ歯の安定性が向上します。ただし、すぐになじむわけではないので、注意が必要です。
食事やうがいなどで徐々に溶け出し、粘着力が低下していく傾向にあります。
粉状の薬剤を振りかけるタイプの入れ歯安定剤で、厚くなりにくいのが特長です。部分入れ歯にはあまり適していません。
レジン床と金属床の両方で使用できます。水や唾液と組み合わさることで粘着力が発揮されます。ただし、唾液が少ない方は粘着力があまり発揮されず、効果を感じにくいことがあります。
使用時は濡らした入れ歯全体に粉をまんべんなく振りかけます。薄く塗布できるため、口の中に入れた時の違和感が少ない入れ歯安定剤です。
金属床やプラスチック床(レジン床)の入れ歯に使用できます。総入れ歯にも使用できます。操作性に難がありますが、入れ歯が非常にがたつく場合には効果を発揮します。
シートは水や唾液と接触することで粘着力が発揮されます。商品によって、濡らした入れ歯にシートを貼るものや、事前にシートを濡らしてから入れ歯に貼るものがあります。また、シートが入れ歯の形になっているものや、ユーザー自身でカットして調整するものもあります。上下の入れ歯に適したタイプもありますので、購入前に使用方法などをよく確認してください。
入れ歯が落ちにくくなる
口の中にフィットしていない入れ歯を使用すると、何かのはずみで入れ歯が落ちてしまうことがあります。入れ歯安定剤を使用すると、入れ歯と歯茎がしっかり密着するため、安定し、落ちにくくなります。また、歯茎と入れ歯の間に食べかすが入り込むのを防げます。
しっかり噛んで食事ができる
入れ歯がぐらついていると、噛むときに入れ歯が動いて食事がしにくくなります。入れ歯安定剤の使用により、入れ歯が安定し、しっかり噛んで食事ができます。また、入れ歯を使用していると口の中にくっつきやすいものは基本的に食べにくいですが、入れ歯安定剤を使えば、食べられる食材の選択肢が増えます。
噛むときの痛みを軽減できる
入れ歯で噛むときに、口の粘膜を覆う「床」と呼ばれる部分が歯茎とあたり、痛みを感じることがあります。入れ歯安定剤はクッションとして機能し、使用すると痛みを軽減できます。
会話がしやすくなる
歯茎と入れ歯の床部分に少しでも隙間ができると、空気が漏れ、発音がしにくくなることがあります。入れ歯安定剤によって歯茎と床部分を密着させれば、入れ歯をしていても発音が妨げられず、会話がスムーズになります。
口の中についた安定剤の取り外しが難しい
入れ歯安定剤は粘着性が高いため、口の中につくとベタベタして簡単に外すのが難しいことがあります。ブラッシングでの取り外しには限界があるため、安定剤が外れないときは指にガーゼを巻いて軽くこする方法が必要です。
ただし、力を入れすぎると口内の粘膜を傷つける可能性があるので、注意が必要です。
汚れが付着しやすくなる
入れ歯安定剤は粘着性が高いため、入れ歯や口内にこびりつきやすく、その部分に汚れが付着しやすくなります。安定剤が入れ歯から外れないままにしておくと、汚れの蓄積は細菌の繁殖を促し、虫歯や歯周病のリスクを増加させる可能性があります。
口内の乾燥と細菌増殖
入れ歯安定剤の一部は水分を吸収して密着性を提供します。高齢者は通常唾液の分泌が減少傾向にあるため、入れ歯安定剤の使用により口内がより乾燥しやすくなります。口内の乾燥は汚れを洗い流すのを難しくし、細菌の増殖を助長します。細菌の増殖は歯周病のリスクを高めるだけでなく、誤嚥性肺炎のリスクも増大させます。
噛み合わせの問題
噛み合わせは微妙なバランスが必要です。自分で入れ歯安定剤を調整しても、適切な噛み合わせを達成するのは難しい場合があります。また、前回の使用で残った入れ歯安定剤が付着したままになっていた場合、厚みが不均一になり、噛み合わせに問題を引き起こすことがあります。
亜鉛による健康リスク
一部の入れ歯安定剤には粘着性を高めるために亜鉛が含まれていることがあります。亜鉛を長期間摂取し続けると、亜鉛の過剰摂取による健康問題が発生する可能性があります。貧血や手足のしびれなど神経障害が起こる可能性があるため、亜鉛を過度に摂取しないように注意が必要です。
アレルギー反応
長期間入れ歯安定剤を使用すると、一部の人には化学物質に対するアレルギー反応が現れることがあります。口内で異常を感じた場合、直ちに入れ歯安定剤の使用を中止し、歯科医に相談することをお勧めします。
入れ歯安定剤には、入れ歯の安定性向上といった利点がありますが、それと同様に口内に残留する可能性や細菌の増殖といったリスクも存在します。
入れ歯安定剤は入れ歯の揺れや外れやすさ、痛みを軽減する有効な手段ですが、根本的な問題解決には至りません。入れ歯が合わずに不安定な場合は、歯科医院での診察が必要です。入れ歯安定剤を使うのは、応急的な措置と捉えるべきです。
入れ歯安定剤の説明書にも、長期使用を避け、歯科医に相談するよう推奨する記載がされています。これは、メーカーも製品を長期的な解決策ではなく、応急処置として提供していることを示唆しています。
さらに、噛み合わせに問題がある場合、入れ歯製作前に噛み合わせの調整が必要で、入れ歯再製作にかかる時間と費用が増加します。
入れ歯の適合性に疑念が生じたら、入れ歯安定剤に頼りすぎずに、できるだけ早く歯科医に相談しましょう。
ご自分の入れ歯の場合はどうなんだろう?と疑問に感じたり、接着剤を使わなくても外れにくい入れ歯を使いたいとお悩みになっている方は、精密入れ歯作りのプロである博多プライベート歯科へご相談くださいね😊