歯を失った後、インプラントやブリッジといった治療方法の選択肢がある中から入れ歯を選び、いざ入れ歯を作ろうとしてみたら、今度は保険で作る入れ歯と自費診療で作る入れ歯があること・様々な素材や形のものがあることがわかり、また何を選べばいいのかわからなくなってしまった…という方も多いのではないでしょうか。
とりあえず、保険適用外ということは治療費が高額なのだろう、といった漠然としたイメージは持てても、どう違うのかといったことまではご存じない方が多いと思います。
こちらでは保険の入れ歯と自費の入れ歯の違いをご紹介いたしますので、ぜひ参考になさってください。
保険の入れ歯のと自費の入れ歯の違いは
材料・素材 治療工程 治療費
主にこの3つです。
この3つの違いによって、保険の入れ歯と自費の入れ歯で様々な部分が大きく変わります。その違いを理解し、なぜ違うのかという理由を知っていただければ、ご自分にはどのような入れ歯が合っているのか分かるようになるはずです。
保険で作る入れ歯の最終目標は、「安価で噛める入れ歯をつくること」です。 ですので、なるべく安価な素材を使い、材料費を浮かせることで治療費を抑えて、最低限度食事ができるよう食べ物を噛める入れ歯を作ります。
噛めることさえ達成できていれば目的は果たしているので、明らかに入れ歯とバレバレだという見た目や、しゃべりにくいといった違和感には、対応できなくてもしょうがないと諦めなければならないこともあるでしょう。
どれだけ時間をかけてこだわって作成しても、反対に質より量を重視して雑に作成したとしても、保険診療なので一つの入れ歯を作って歯科医院が得る利益は変わりません。
そうなると、残念ながら経営のためには患者様お一人にあまり時間をかけることができず、質より量を重視せざるを得ないという歯科医院が出てきてもおかしくありません。
自費で作る入れ歯の最終目標は、「自分の歯に近い感覚でストレスなく噛むことができるようになり、見た目もよい入れ歯、長持ちする入れ歯を作ること」です。保険の入れ歯とは、まず前提として目指すゴールが異なります。
人間は一人ひとりお口の中の形や環境が違いますので、ゆっくり時間をかけて、その人にとって適した入れ歯をオーダーメイドで作っていきます。
目的達成のためには、どのような素材が適していて、どのような形にすればいいだろうかといったことを導き出すために、時間をかけてじっくりと患者様に向き合います。
良い素材・材料を使い、ストレスなくしっかりと食事ができて、なおかつ違和感なく見た目も良い入れ歯を作ることが目的ですので、その分費用がかかります。
保険の入れ歯は、とりあえず食事をできるようにする為に作る。自費の入れ歯は、食事はもちろん、見た目など様々な問題を解決する為に作る。
このように同じ入れ歯作りでも、作る目的が異なります。
その目的を実現させるために、保険の入れ歯は「材料・素材」は厚生労働省に定められた安価なものだけを使用し、「治療工程」を患者様にもある程度妥協していただくことで「治療費」を安価に抑えられます。
自費の入れ歯では、患者様のお悩みに合わせた「材料・素材」を厳選し、「治療工程」にこだわり、「治療費」が高額になります。
ご自分は何を重要視したいのか、ご自分の目的のために適しているのは自費の入れ歯なのか、保険の入れ歯なのかをじっくりと考えて選択する必要があります。
自費の入れ歯 | 保険の入れ歯 |
---|---|
人工歯の材料・素材の違い | |
丈夫さや美しさから選べるセラミック製の固く丈夫で、硬い食べ物も噛み切りやすい人工歯や、天然歯のような美しい見た目や色の人工歯をオーダーメイドで作ることができる。 |
プラスチック製人工歯のみ使用可能劣化や破損の可能性の高いプラスチック製の人工歯のみ使用可能。色や形も既製品の人工歯の一定数からの選択となる。 |
床(人工歯肉)の材料・素材の違い | |
様々な素材で柔らかさや薄さを実現柔らかく歯茎に痛みを感じにくいシリコン床や、薄く熱伝導に優れた金属床、しなりがありバネを必要としないノンクラスプ床など、多くの素材から患者様の希望に合ったものを選ぶことができる。 |
プラスチック製床のみ使用可能劣化や破損の可能性の高いプラスチック製の床のみ使用可能。破損を防ぐため厚みをもたせる必要がある。 |
治療が終わるまでの期間(入れ歯完成までの期間)の違い | |
早くて3ヶ月、長くて8ヶ月ほどで完成入れ歯の完成前にリハビリ用入れ歯を作成し、噛み合わせを正したり、一つひとつの工程を丁寧に時間をかけるため、長い期間が必要になる。 |
1ヶ月~1ヶ月半ほどで完成作業工程が少ないため、その分早く入れ歯を作ることができる。とにかく急いで入れ歯を作りたいという方におすすめ。 |
入れ歯の機能の違い:入れ歯装着時の違和感 | |
保険の入れ歯より違和感を覚えにくい様々な素材を使うことができるので、厚みや大きさを抑えることができ、違和感なく装着できる場合が多い。違和感がなければ自分の歯の感覚に近い咀嚼が可能になる。 |
厚さ、大きさに違和感を覚えやすいプラスチック製の厚く大きな入れ歯は異物感を強く感じやすく、嘔吐癖のある方は特に気分が悪くなる場合がある。異物感が強い入れ歯は咀嚼しづらい。 |
入れ歯の機能の違い:入れ歯の強度 | |
保険の入れ歯より丈夫素材が高額な分、強度も高く、保険の入れ歯よりも咬合による破損はしにくい。 |
自費の入れ歯より破損しやすい噛み合わせの力が強い方は床が真っ二つに割れたり、人工歯が欠けたりする破損が起こることがある。 |
入れ歯の機能の違い:入れ歯の密着度 | |
密着度が高く外れにくい事前にリハビリ用の入れ歯で歯や顎の動きを想定し、精密に型をとり繰り返し調整していくので、しっかりと密着して外れにくい入れ歯ができる。 |
隙間ができ、外れやすくなっていく歯や顎の細かい動きまでは想定していないため、使用するうちに次第に床と歯茎の間に隙間が生まれ、空気が入りこむことで入れ歯が外れやすくなる。 |
入れ歯の機能の違い:入れ歯の噛み合わせ | |
元の咬合に近づけられる顎や歯の細かい動きをデータで分析し、よりフィットしていくように改善していくことで、実際に噛んだときに限りなく自分の歯に近い噛み心地になる入れ歯を作っていく。 |
合わない可能性が高くなる自分に合う入れ歯であれば噛み合わせも良くなるが、素材や人工歯の選択肢が少ない分、自分に合わない可能性も高くなる。 |
入れ歯の機能の違い:入れ歯を入れたときの発音 | |
喋りやすいよう調整可能入れ歯をつけたときにも発音しやすくなるように、リハビリ用の入れ歯にてテストを繰り返してしっかり調整していく。 |
喋りやすさは考慮されていないことも細かいサイズまで考慮されていないため、希望どおりの形にするというわけにはいかず、喋りにくいことがある。 |
入れ歯の機能の違い:入れ歯を入れたときの見た目 | |
入れ歯とはわからないほど美しく自然人工歯や床(人工歯肉)の色や形にこだわり、歯がすべて揃っていた頃と顔が変わることなく、見た目の違和感などがないように、装着時の美しさや歯並びなども重要視している。 |
見た目はあまり考慮されていない安価で噛めるようになることを目的としているので、細かい見た目までは考慮された設計にはなっていない。 |
入れ歯の機能の違い:痛みやトラブル | |
大きな不具合が起きにくい作成の際にリハビリや細かい咬合調整を行っているので、通常の使い方をしていれば、すぐに大きな不具合が生じることは少なく、トラブルも起こりにくい。 |
不具合が多いことがある完成するまでの早さを重視して作成すると、入れるだけで痛い・痛くて噛めない・すぐに外れてくるなどの不具合や不満がでるケースが多く、その都度通院しての調整が必要となる。 |
施 術 名 │精密入れ歯治療
料 金 │25万円~45万円(治療費は入れ歯の材質などによって異なります)
考えられるリスク │調整を怠ると歯肉に痛み、噛みにくさなどを感じることがあります。定期検診を受診してください。
保険の入れ歯にも自費の入れ歯にも、それぞれメリットとデメリットがあることがわかっていただけたでしょうか。
どちらを選んでも間違っているということはありません。ご自分が目指したいゴールはどちらであるのか、じっくり考えて入れ歯作りに踏み出すというのもとっても大切です。
しっかり費用と時間をかけ、自分に合ったオーダーメイドの入れ歯を作りたい方
自費の入れ歯がおすすめ
安価で早く、とりあえず噛める入れ歯を作りたい方
保険の入れ歯がおすすめ