インプラントの危険性やリスクとは

入れ歯

皆様は入れ歯に対し、様々な思いをお持ちだと思いますが、良いイメージを持っている人はあまりいないのではないでしょうか。
子供の頃に「歯磨きしないと大人になったとき、入れ歯になって困ってしまうよ」とい言い聞かされたことがある人はたくさんいらっしゃると思います。入れ歯は悪いものだと、子供の頃から刷り込まれていくのです。
しかし実際は、入れ歯にもいいところがたくさんあります。
様々な理由でインプラントでは対応できず、入れ歯治療でないと治療ができない患者様は少なくありません。
こちらでは、入れ歯だけでなく、インプラントのリスクや危険性、副作用についてお話をさせていただきます。
入れ歯の良いところを見直してもらうきっかけになればと思います。

インプラントにはリスクも多い

入れ歯

外科処置であるインプラントは多くの知識やスキルが必要です。治療スキルや経験も必要ですし、被せ物や人体の解剖学的な知識、医科分野との提携など総合的なスキルが必要になります。さらに、安全性も重視しながら、院内の衛生環境、管理、設備などの機器についても学ばなければいけません。
医師だけでなく、インプラントチームのスタッフ全員に知識・治療スキルの習得が必須であり、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・技工士が、全員で専門性を深め、高い意識を持ちながら、チーム医療で取り組むことが大事です。
このような多くの条件をクリアしてこそ、安全かつリスクの少ないインプラント治療の実現が可能になります。

インプラント治療が普及したばかりの頃に比べ、最近は安全性の高い歯科治療と言えるようになってきたインプラントですが、外科的処置を行う必要がある以上、リスクはゼロであるとは言えません。
入れ歯もしくはインプラントのどちらの歯科治療を選択するのかと考えたときに、リスクについて理解し、入れ歯、インプラントのそれぞれのメリットとデメリットを把握したうえで、治療を検討すべきです。
当院では、インプラントのリスクやメリットやデメリットを含め、インプラントや入れ歯治療をしっかり理解してもらってから歯科治療を始めていきます。

炎症や感染症のリスク

炎症や感染症のリスク

インプラント手術に使用する器具は、しっかりと滅菌されたものを使用するのがセオリーですが、滅菌がずさんな歯科医院が絶対に存在しないとはいい切ることができません。過去にも歯科治療の器具を滅菌せずに使いまわし、報道された事例がありました。
また、インプラント治療後にも、歯ぐきや骨に菌が入り、感染症や炎症を起こすことがあります。歯周病に似た病気の「インプラント周囲炎」は、進行すると骨が溶けるなど周囲組織の損傷が起こってしまい、せっかく入れたインプラントが抜けてしまいます。

骨と結合しないリスク

骨と結合しないリスク

まれにインプラントと骨が結合しないことがありますが、その原因はさまざまです。手術前の計画不足や準備不足、適切な診断が行われなかったこと、インプラントの位置が誤っていたことなど、手術を行う医師側の問題が考えられます。
また、骨の質が十分でない場合や、強い咬む癖がある場合、遺伝的要因、喫煙、インプラント周囲の炎症、服用中の薬の影響なども要因として考えられます。

金属アレルギーのリスク

金属アレルギーのリスク

インプラントはチタンという金属で作られます。チタンは金属アレルギー反応が起こりにくく、アレルギー持ちの方でも使用できる素材とされていますが、重度のアレルギーの人にも絶対安全といい切ることは難しいでしょう。
金属を使用しないセラミック製のインプラントもありますが、取り扱っている歯科医院が少ない、価格が高いなどのデメリットがあります。

部位で異なるインプラントのリスク

インプラントは埋入する部位によって危険性の度合いが異なります。リスクが高い部位では、精密な検査やシミュレーションソフトを使用して、危険性を回避することが可能です。

上顎


入れ歯

上顎は骨が薄く、骨の厚みがあまりないことがあります。増骨する治療をしないと、インプラントと骨が結合しません。また、上顎の歯槽骨は、副鼻腔のなかで最大の空洞である上顎洞と近接しています。
上顎洞を穿通させてしまうと、術後性上顎洞炎を起こしてお鼻の付近の副鼻腔まで炎症が広がります。

下顎


入れ歯

下顎は、血管や神経と近接している「下顎管」があります。下顎管が損傷すると、一部神経麻痺や周囲の血が止まらないことがあります。

前歯


入れ歯

前歯は骨が薄いケースが比較的多く、インプラントが露出することがあります。

ご病気によるインプラントリスク

入れ歯

インプラントがロストしたり、失敗に終わったりしてしまう代表的な疾患には、歯槽膿漏や糖尿病などが挙げられます。

歯槽膿漏の患者様のインプラントはリスクが多くあります。
歯槽膿漏の患者様は、インプラント治療前にしっかり歯周病治療をしなければなりません。歯槽膿漏の患者様は、歯槽膿漏治療の知識・スキルを持つ専門の歯科医師のもとでインプラント治療を始める必要があります。
術後の歯周病の管理も大切です。長い期間インプラントを使ってもらうためにはお口を清潔にしておかなければなりません。そのモチベーションを維持してもらうように指導します。
セルフケアをはじめ、定期的にプロフェッショナルケア(歯科で予防管理)を受けていただくことが必須となります。

全身疾患の既往歴がある患者様の治療には、歯科医師とかかりつけ医との連携が必要不可欠です。歯科医師も全身疾患を把握して、治療もしくは管理しながら、インプラント治療を始めることが重要です。

老後のインプラントリスク

老後のインプラントリスク

30代や40代の若い年齢で歯を失う方も珍しくありません。若い方は余計に入れ歯への抵抗が大きく、インプラントを選ぶ可能性も上がることでしょう。
インプラントを入れて、数十年は順調に何でも噛むことができていたとしても、認知症や体の麻痺などによって歯磨きが困難になり、インプラント周囲炎でインプラントがだめになってしまったら、インプラントの除去が必要となります。
しかしその時に老化による体力の低下など、健康面で外科手術が難しい状態になっていたら、治療はとても困難になるでしょう。
老後のメンテナンスのしやすさも考慮しておきたいという場合は、インプラントはやめておいたほうがいいという考え方もあります。

インプラント治療で起きた死亡事故

入れ歯

インプラント治療の失敗で、患者様と歯科医院のトラブルも実際に起こっています。
インプラント治療で不信感や不満を覚え、不安になる方が増加して消費者センターへのインプラント治療の相談も増えています。
過去の最悪なケースでは、専用のドリルを使い下顎骨に穴をあける処置中に骨を貫通させ、舌の下にある動脈を傷つけてしまったことが原因で、インプラント手術中に患者様が死亡した事故も起こりました。

テレビ2007年7月14日 インプラント手術中に出血が止まらず、70歳女性が死亡

東京都中央区八重洲の歯科医院で5月、インプラント手術を受けた都内在住の会社員の女性が、手術中に出血し死亡したことが13日、分かった。警視庁中央署は業務上過失致死の疑いもあるとみて、遺体を司法解剖するなど捜査を始めた。

調べでは、女性は5月22日、男性院長からインプラント手術を受けている最中に出血が止まらなくなり容体が急変。すぐに別の病院に運ばれたが、特別な手当てもなく帰宅。その後再び内出血をきたし、気道圧迫により翌23日に死亡した。

警視庁は出血と死亡との因果関係を調べるとともに、手術に問題がなかったかなど、事情を聴いている。

顎の下の動脈が損傷してしまうと出血が起こり、血がたまって喉をふさぎ、呼吸ができなくなってしまいます。
インプラント治療での死亡事故、この動脈損傷でおきた窒息が原因でした。

動脈を傷つけてしまうことは、直接生命にかかわります。下顎の骨が痩せている場合に強引に手術してしまうと事故につながります。
そういう場合、CT撮影をすることで、事前に危険を回避することができます。
CT撮影では、パノラマ撮影ではわからない骨の形態や、骨の量の正確な情報を知ることができます。
こちらの死亡事故が起こった医院では、治療前のCT撮影がされていませんでした。もし下顎の骨の正確な情報を把握できていれば、この事故は防ぐことができたのかもしれません。
インプラント治療をする場合、安全な手術のためにはCT撮影が有効ですが、義務ではありません。歯科用CTを持たないため、CT撮影なしでインプラント治療を実施している歯科医院もあるのが実状です。

インプラント専門医師は、治療中に想定外のトラブルがおこった時、冷静に適切な行動を取れるようになっておくことが必要です。適当で危険なインプラント治療は、あってはいけません。
上記の事故現場では、対応が不適切だったとして当時から大問題視されています。
患者様は事故を起こした歯科医院から救急車で搬送されましたが、その時にはすでに心拍停止状態だったそうです。
救急車を呼ぶのが遅くなったということも、死亡事故の原因となってしまったと考えられます。
下の顎の付近にある動脈を傷つけた時の止血は、大病院でも手術が難しいです。窒息が起こり生死にかかわることから、すぐに救急病院に運ぶべきだったと思います。

インプラント治療の成功とは?

入れ歯

「インプラント治療を問題なく終った」ということが、実際に成功と言えるのでしょうか?
「ただ事故が起きずにインプラントを入れることができた」というだけでは、成功と言うには不十分です。
安全なインプラント治療を行うことは当然で、さらにご自身の歯のように噛み合わせや見た目のことも考えながら治療をしなければなりません。
「見た目をよくしたい」「固いものを噛みたい」という患者様の要望にも応えていかなければ、本当の意味でのインプラント治療が成功したと言うことはできません。

インプラントは一般の歯科治療と違い、精密な手術を必要とするため、医師には精度の高い丁寧な治療ができる知識と技術力が必須です。
可能性のある危険をしっかり把握・理解して、急なトラブルが起きても冷静な判断をし、適切な処置をしなければいけません。

また、私たちが言うインプラントの成功には、長い間インプラントの機能的な部分や見た目をキープすることも含まれます。
インプラントを長く維持していくためには、定期メンテナンスが必要です。インプラント手術が成功しても、術後のメンテナンスができていなければ、インプラントが抜けてしまうことがあるのです。
定期的なメンテナンスを数か月単位で行うことが重要です。

「精密入れ歯」という選択肢も

入れ歯

インプラントのリスクを考え、インプラントに不安を感じている方には、入れ歯という選択肢もございます。
当院では、精密な入れ歯を作ることが可能です。精密入れ歯を作るためには、きちんとした口腔内の型取りが大切です。保険の入れ歯作りでは、決まった型採り用トレーを口の大きさにのみ合わせて使用しますが、当院では患者様一人一人に合うトレーを使って型取りをすることによって、精密な入れ歯作製を可能にしています。

入れ歯は食べ物を噛むことも重要ですが、その他にも細かい部分にこだわって設計することができます。金属やプラスチックの種類により、味覚や発音の仕方も変わりますし、入れ歯の強度も違ってきます。
入れ歯はどれも同じではありません。お口は患者様によって違いがあり、一人一人異なるので同じ内容の治療にはならないのです。歯の形は基本的に同じように見えますが、残っている歯の状態や顎の大きさの問題、入れ歯の使用期間、患者様の年齢も考えながら、長く使っていける設計にしていかないといけません。
患者様にお話を伺うと、「以前入れ歯を作ったことがあるけれど、使っていない」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。せっかく作っても、使いたくないと思われてしまうような入れ歯では意味がありません。私たち入れ歯の専門医たちが、きちんと噛める精密な入れ歯をご提供いたします。

今からの時代は、平均寿命ではなく健康寿命が重要になってきます。健康寿命を延ばしていくためには、入れ歯でもしっかり食事ができるようになることが大切だと思います。
皆さんが持つ、入れ歯の負のイメージを取り払い、見直していくことで、入れ歯の未来も明るくなっていくのではないでしょうか?

当院は、患者様のお悩みやご要望を聞いて、精密入れ歯のオーダーメイド治療を始めていきます。したがって、カウンセリングをとても重要視しています。
カウンセリングルームで、専門のドクターがお話をうかがい、当院の入れ歯などの治療方針を詳しくお話しします。インプラントや入れ歯などどんな歯科治療ができるのか・利点欠点・その中でリスクも考えられるのかなどをきちんと理解して、治療法を決めていただくのが重要だと考えています。
歯は一度削ったり抜いたりすると、元通りにはなりません。歯科治療を始める前に、しっかりカウンセリングを受けていただき、ご納得・ご理解いただいてから歯科治療を進めるのが重要です。

入れ歯

他院で説明を受けたものの、不安だという方にはセカンドオピニオンも受け付けています。
セカンドオピニオンとは、治療のことについて、かかりつけ医以外の医師から意見を聞くことです。
歯科医師のスキルや医院の治療方針によって、処置できる歯科治療や歯科治療のクオリティが異なる場合があります。
今、自分が治療を受けようと考えている歯科治療は、自分にとって本当に適した歯科治療なのかと不安になった際などに、他院の見解を聞いてみるということは、ご自身がご納得して歯科治療を受けるために大事なことです。
当院ではセカンドオピニオンも受け入れ、治療方法を選ぶのに悩んでいる患者様や、歯科治療中の患者様のご相談にも乗っています。
例えば、抜歯になったケースでは、ブリッジ・入れ歯・インプラントのどれが一番自分に合っているのか、多くの医師の話を聞いてみたいと思われるのは自然なことだと思います。治療方法の選択に悩んでいる患者様や、治療中の治療内容にご心配やご不安な気持ちをお持ちの患者様は、是非お尋ねください。

インプラント治療の考え方とは

入れ歯

インプラント手術中に起こる事故の多くは、歯科医師による技術のなさや倫理感のなさから起こることが多いのです。詳しく知りたい方は、消費者センターのHPをご覧ください。

インプラントの事故やリスクに焦点を当て、否定的にご紹介しましたが、もちろんインプラント治療自体や、インプラント治療を行う歯科医院が悪だと言いたいわけではありません。
きちんと勉強されたドクターが、適切な判断のもとで患者様の体調を管理し、問題がないように行うのであれば、インプラントは素晴らしい治療です。
当医院に来院いただいた患者様からインプラントを希望された際には、信頼できるインプラント専門医院を紹介することもあります。

しかし、骨の量や厚さなど分かりにくいパノラマX線で撮影しただけで、骨量の検査もせずにインプラント手術を実行したり、歯槽膿漏の治療をきちんとせずに、歯を抜いてインプラント治療をしたりしても、そのインプラントの機能は長持ちしません。
本来ならばインプラントオペを実行する前に、歯がなくなった原因に対する対応をしっかりして、これ以上歯を失わない様にすることが先決です。

CTなどの検査をせずにインプラント治療をしても、成功する場合もあると思います。しかし、失敗した時に、身体に負担がかかるダメージが大きいことは覚えておかなくてはなりません。
インプラントを考えている患者様は、「やらなければよかった」と思うことのないように、ぜひこのことを頭に入れて、検討されてください。

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